本作におけるラスボスとは何か【御ナラティヴ】

本作におけるラスボスとは何か【御ナラティヴ】

 『御ナラティヴ』におけるラスボスは、単なる悪役ではありません。一般的な物語において、ラスボスとは勇者の前に立ちはだかる最後の敵です。世界を滅ぼそうとしたり、人々を苦しめたり、圧倒的な力で主人公たちを追い詰める存在として描かれることが多いでしょう。

しかし、本作におけるラスボスは少し違います。彼女たちは確かに、圧倒的な力を持つ存在です。勇者が束になって挑んでも、簡単には倒すことができません。むしろ、これまで彼女たちを倒した勇者はいません。けれども、彼女たちは世界を無意味に破壊しようとしているわけではありません。人々を苦しめるために君臨しているわけでもありません。本作のラスボスは、世界を治める統治者でもあります。現在の世界を支配している中心的なラスボスは、麟・カーネーション、チョイナ、無理魔理矢、鬼ヶ島霊子の4人です。彼女たちは、それぞれ異なる国や分野を治めながら、世界全体の秩序を維持しています。

麟・カーネーションは、世界皇帝であり、勇者局の局長でもあります。豪快で明るく、圧倒的な力を持つ最強のラスボスです。チョイナは、蛇人国オフィウクスの統治者であり、勇者局の教官でもあります。正々堂々を重んじ、勇者たちに「勝つこと」だけではなく、「生き抜くこと」の大切さを教えています。無理魔理矢は、魔族の国アクエリアスを治める世界最強の魔法使いです。豪快で破天荒な人物ですが、魔法、化学、錬金術などに通じた天才でもあります。鬼ヶ島霊子は、鬼ヶ島の統治者であり、法律、司法、防災、治安などを担う存在です。普段はおっとりとした母性的な人物ですが、怒らせると非常に恐ろしい一面を持っています。

この4人は、いずれも「ラスボス」と呼ばれるにふさわしい力を持っています。しかし、彼女たちはただ恐怖によって世界を支配しているわけではありません。むしろ、長く世界を治める統治者として、国民から慕われている存在でもあります。本作におけるラスボスは、「倒すべき悪」ではなく、「強すぎる統治者」として描かれています。彼女たちは人々を守り、世界の秩序を維持し、危険な力を持つ者たちを管理しています。その代表的な仕組みが、「勇者局」です。

普通の物語であれば、勇者はラスボスを倒すために旅立ちます。けれども本作では、勇者は最初から自由に放置される存在ではありません。力を持つ者が無秩序に行動すれば、本人だけでなく周囲の人々も危険に巻き込まれます。勇者の力は、正しく使えば人を救うものになりますが、使い方を間違えれば災害にもなり得ます。だからこそ、本作のラスボスたちは勇者をただ敵として扱うのではなく、教育し、訓練し、時には厳しく叱ります。勇者を殺すためではなく、勇者を育てるために存在している。勇者を支配するためだけではなく、勇者が無謀に死なないように管理している。そして、世界全体の安全を守るために、勇者の力を正しい方向へ導いている。それが、本作におけるラスボスたちの役割です。

もちろん、彼女たちは優しいだけの存在ではありません。規律を破れば厳しい罰がありますし、必要であれば容赦なく力を振るいます。相手が勇者であっても、世界の秩序を乱すなら見逃しません。しかし、その根底には「世界を守る」という目的があります。『御ナラティヴ』のラスボスは、勇者の敵でありながら、勇者の教師でもあります。世界の支配者でありながら、世界の保護者でもあります。圧倒的な力を持つ存在でありながら、その力を世界の維持のために使っています。

だからこそ、この世界では「勇者」と「ラスボス」の関係が、単純な敵対関係ではありません。勇者はラスボスを倒す存在です。けれども同時に、ラスボスから学び、鍛えられ、管理される存在でもあります。この少し変わった関係性こそが、『御ナラティヴ』という作品の大きな特徴です。そして、その関係性をもっとも分かりやすく表している場所が、勇者を育成・管理するための組織「勇者局」なのです。